負けるわけにゃいきまっせんばい! 76
<テレビへの急転換・その実態>
萩本さんのお陰で、これを機にテレビの仕事は急速に増えました。もちろん、映画の合間にも〈ザ・ボディーガード〉、〈刑事君〉、〈特別機動捜査隊〉、〈荒野の素浪人〉、〈夜明けの刑事〉、〈破れ傘刀舟〉、〈二人の事件簿〉、〈必殺仕置屋稼業〉、〈右門捕り物帳〉、〈ザ・ゴリラセブン〉、〈子連れ狼〉等々のテレビ映画に出演はしていましたが、映画ファンの方だけでなく、ブラウン管を通して、お茶の間のみなさんとも、広くお馴染みになれたのはこの頃からでしょう。 京都の太秦にある東映京都撮影所で制作していた時代劇、〈水戸黄門〉、〈大岡越前〉、〈銭形平次〉、〈桃太郎侍〉、〈八百八町夢日記〉、〈暴れん坊将軍〉、〈三匹の侍〉、京都撮影所(昔の松竹)で撮影していた〈鬼平犯科帳〉、等々と書き綴ればキリがありませんが、数多くの作品にゲスト出演のため、大げさに言えば一年のうち半年近く京都暮らしで、京都に一部屋借りたほうが、滞在費も安上がりだったくらい。 でもこんなことを書いていると、みなさん思いません? 俳優って欲張りというか、いい気なもので幸せな奴だなあって――。 だって同じ一生という、限られた時間の中で、たとえ断片的であったとしても、数え切れないほどの、いろんな人物の疑似体験というか、生き方を所有できるんですから。その上お金を貰って。 ――と思うでしょう? ところがそうでもないんです。俳優として、ある人物を納得のいくまで、創造し具象化して演じるなんて、そんな充足感を味わうことなんか、俳優人生の中でまずほとんどありません。マスコミの世界ってそんな所なんです。何時も時間(制作日数)にせっつかれ追いかけられて、終われば充電する間もなく、次の仕事を見つけなければ生活できない。演出家も、脚本家も、その他のスタッフも。それだけこの業界は(少なくとも日本の場合)粗製濫造に振り回された上、報酬があまりにも少ないということです(ごく一部の人を除いて)。 特に私たちバイプレーヤーは想像の外で、あれは役に生きるというよりは、今まで自分の身体に蓄積してきたものの切り売りですね。そのうちに蓄えも無くなって、最後はボロボロになり賞味期限も切れ、見向きもされなくなり、ポイ捨てされるだろうという恐怖感に苛まれている。これが正直なところでしょう。私などはバカですから、仕事をしているときはすっかりそんなことも忘れ、雀百までで踊っていますが、時々己の姿(実体)を見つめ愕然としております。
by masashi-ishibashi
| 2008-08-17 14:56
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