負けるわけにゃいきまっせんばい! 6
権力欲に憑かれた悪党は、権力の象徴である豪華な椅子からずり落ちて死ぬとか、抱きかかえるようにしがみつきカッと目を剥いて死ぬとか。しかしこの椅子も、現世では己の欲望を満足させてくれたかもしれませんが、あの世へ持って行ったらさぞかし邪魔でしょう。インテリアというわけにもいかず、いつも自分の背中にくくりつけて歩いてたりして。この無用の長物は結構へたばりますよ。黄泉の国ではなんの価値もないでしょうからね。
また力と力で争う、闘争の虚しさなんてのもあります。宇宙規模からみれば人間なんて針の先で突っついたくらいのものです。ところが欲望のほうは宇宙規模で大きい。まさに無限大なのであります。これが個人レベルであれ世界レベルであれ、ともかくぶっつかりあって争いが起きます。そして全てとは言いませんが、本当の正義とかヒューマニズムなんて、どこにあるのかなあと思うことばかりです。いつも大義名分というデコレーションで粉飾し、正当化されているような気がしてなりません。 理由はいろいろあるとして、個人のエゴイズムが衝突して争いとなり究極の行為として殺人という犯罪を生みます。殺人を犯したほうは取り返しのつかない結果に茫然自失となる。いやいや冷酷で冷めた奴もいるでしょう。 死ぬほうは「何で?」という思いが、薄れゆく意識の中で瞬間、脳裏をよぎるでしょう。震える手を傷口に持っていく、そっと触ってみる、その手を顔の前に持ってくる、ベットリと着いている赤い血、いやもうカラーではなくてモノクロームになっているだろうか、鼻の先に持ってきて血のにおいを嗅いでみる、舐めてみる、その所作はもはや緩慢だが呼吸は浅く短く早い、いくら空気を吸っても酸素が無いみたいで苦しい。そうだ酸素を運ぶ血液が流れ出てしまって足りないのだ。もう目が霞んで視野がだんだん暗くなってくる、「何で? 死にたくない! 助けてくれ!」虚空に手を伸ばす、必死に何かを掴もうとする、恐怖と生への最後の執着か―、 そのまま崩れ落ちる、地面を掻き毟って息絶える。その屍の上を巷の塵芥が風に舞い散りながら吹き飛ばされていく。この人間の最後にどんな残像が残ったのだろう―。 なにか虚しさを表現してみたくて、こんな死に方のお芝居を考えてみます。普段目に見えない、人間の内面にある心理の屈折というか、またその状態を具象化し絵にして見せるのです。悪役(敵役)は俳優が演じるものなのです。無限の創造的バリエーションを膨らませながら。
by masashi-ishibashi
| 2008-04-15 19:07
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