負けるわけにゃいきまっせんばい! 3
現実のものをそのままドラマに持ちこんできたら、リアルに見えるかといえば、それは少しばかり見当違いのようです。世界中からリアルタイムで飛び込んでくる、あらゆる実況中継などはそれ自体ドラマチックなものが多いですから、それでいいのですが、フィクションであるドラマでは、こんなことがあります。
昭和四十九年(1974)のゴールデンウイークに公開した、東映の武術アクション映画「殺人拳 ・ 2」を製作するにあたり、本モノの武芸者に演じてもらい、迫力を出そうという映画会社の企画で、「腕に自信のある者全員集合!」と全国から、国籍、性別、年令を問わず腕自慢を募ったことがあります。いろいろと多岐にわたる武芸を身につけた、武術家の方たちがざっと千人ほど応募され、第一次の書類審査、第二次の面接審査と選考して、実技ではそれぞれが、ヌンチャク、杖(じょう)、棒、鎖鎌、トイファー、サイ、三節棍などの妙技を披露してくださいました。審査員は、東映京都のプロデューサー松平乗道さん、監督の小沢茂弘さんたち東映の関係者。主演俳優の千葉真一さんと私も立会い、厳選の上その中から、琉球古武道六段・剛柔流空手七段のKさん、沖縄松林流空手三段で中国人のHさん、古武道三段・日本天道師範代のKさん、レバノン空手選手権保持者のJさんたち、十人ばかりの方に出演していただいたのですが、結果としてはあまりほめられたできばえではありませんでした。 実際に近くから生で見ていれば、気迫やスピードなど目を見張る凄みがありますけど、映画としてスクリーンに映ったら動きが細かく速すぎて何をやったのかさっぱりわからない。そのために折角の迫力が伝わってこない。しかしそれを非難する方が本当はおかしいんです。そうなるのは当たり前のことで、本物の武術家に対して失礼というものです。武術とは極端に無駄を省くものなんですから、そのまま演武していただいたのでは映画にならないのです。 また殺人犯の役を演じるのに、本物の殺人鬼を連れてきたらドラマが成立するかといえば、これもそうじゃないわけで、現実と虚構の世界はまったく違うのであります。 フィクションであるドラマではすべてに芝居心がなければ駄目であり、ドラマの中でのセリフや動きは常に現実より凝縮されて、観客に分かりやすく整理され、かつ洗練されていなければなりません。そして立ち回り(アクション)は、現実だったら無駄といわれる間とか動きを意図的に作って、それを人間の心理表現として、絵になるように組み立ててケレンを持たせなければ、観客を堪能させる迫力のある見せ場は創れないのであります。もちろんその人に音楽的なリズム感も要求されます。
by masashi-ishibashi
| 2008-04-12 19:00
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