石橋雅史の万歩計

負けるわけにゃいきまっせんばい! 97

   武道と武術と護身術


 <武道>

 百科事典の武道の項を開いてみますと、こんな風に定義されています。
 武士が武術を通じて身体と精神の鍛錬をして、人間を作る規範とした道のことで、江戸時代末期以後に使用された言葉である。
 武士はその武術を修練してその道を修得したと。
 武術とは、いわゆる武芸十八般などと言われる、弓術、馬術、槍術、剣術、水泳術、抜刀術、短刀術、十手術、銑鋧術(手裏剣)、含針術、薙刀術、砲術、捕手術、柔術、棒術、鎖鎌術、錑術(もじり術)、隠形術(しのび術)の十八種と言うのでありますが、これらはそれぞれにいろんな流派があります。現代、弓道、馬術、剣道、柔道、水泳、薙刀道などはスポーツ競技としても行われておりますが、そのほかの武術も各宗家によって受け継がれているものがあり、その技術が存続されています。そのための「日本古武道振興会」とか「琉球古武術保存振興会」などがありますが、ともあれいずれを修得するにしても、生半可な修練では成就するものではありませんね。オーバーに言えば、文字通り悪戦苦闘血みどろの稽古、稽古の積み重ねであります。人間の身体は恐ろしく緻密に出来ていまして、その全身に張り巡らされた感覚神経と五感は天下一品。何ものにも勝って複雑、緻密、敏感であり、したがってお互いにちょっとでもぶっかり合えば、その防御反応は驚くばかり。誰だって痛いのは嫌ですからね。それに自分の体力の限界を超えれば、どなたに限らず白目を剥きます。武術の修練なんてものは、苦しきことのみ多かりきでして、まさに苦行を乗り越えて押忍の二文字であります。
 江戸時代の武士道の書と言われたものに「葉隠」というのがあります。みなさんも書名はよくお聞きになると思いますが、九州の佐賀鍋島藩士で山本常朝という方の談話を、やはり同藩士で田代陳基という方が聞き書きして編集されたものだそうで、1716年に出来たと言われますから、かれこれ二百九十年ほど前になりますか。「鍋島論語」ともよばれ、戦国以来の武士の体験をもととして、武士の心得を書いてあるもので、「武士道というは死ぬことと見付けたり」とこれまた有名な言葉です。しかしこの死を賛美しているところは、なんとも閉鎖的な尚武の思想ですよね。武士道とはわが国の封建時代に、武士階級の間で重んじられた道徳でして、主君の危難にあたり、家来は身を捨てて忠義を尽くし、また主君は家来のすべてを保護するという、封建的な関係が何代も続きますと、その主従関係はますます緊密になって、それと共に絶対的な倫理道徳が形成されていくわけであります。
 それは戦国以来の、まだ国が統一されていない、それこそ群雄割拠の時代に、それぞれの領主を中心にした、お互いの生きる条件として、知恵として自然発生的に形成され、死を共にした戦場の生活規範が、日常生活に持ち込まれたもので、仁愛、義理、質実剛健、武勇の気風を尊び、死を恐れず、恥を知るという生活が強調され求められたものでして、戦いの治まった江戸時代に入ってからは、封建教学、儒教と結びついて理論化されたようですが、江戸時代前期の儒学者山鹿素行の影響が大変大きいといわれています。彼によりますと、武士は生まれつきの気質を正して寛大な気風を養い、君恩の重きを思って是非を論ぜず忠にはげみ、仁義によって行動しなければならない、としているわけでありまして、「葉隠」などは、藩主を中心に一切の行動を従属させ〈自己をむなしくして死ぬ〉ことを賛美しているのですが、さて個人主義を尊重する現代の倫理道徳、価値観からすればいかがなものですかね。
 この閉鎖的な考え方は、封建社会の小さな世界で、究極の選択として死しかなかった武士たちが、そこまで死を正当化し美化し、悟りに近い境地を求めなければ、死の恐怖から逃れられなかった、一種のマインドコントロールではなかったかとも思うのですが。
 しかしこの精神は、現代あの第二次世界大戦のときにも、臣道実践論として、全国民に滅私奉公の心構えが要求されていたのですね。現在、企業というモンスターの世界にも、政治の世界にも結構あるかも? ですよ。
 今の時代に武道とはなんでしょう? 道とは? この武術の修練と言う荒行のプロセスから、私の中に何が生まれてくるのですかね――。 最終的には〝無〟ですか? そんなに達観した立派な人間になれますかどうか――。
[PR]
by masashi-ishibashi | 2008-09-17 14:25
<< 負けるわけにゃいきまっせんばい... 負けるわけにゃいきまっせんばい... >>



俳優石橋雅史ぶらぶら日記
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
お気に入りブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧