石橋雅史の万歩計

負けるわけにゃいきまっせんばい! 89

 <ストリートファイター>

 学校での稽古が終わりますと、週に二度くらい、夕方から、浅草の千束にあった剛柔会本部道場での稽古に出かけるんですけど、この稽古が終わった帰りの夜がまた恐ろしい。まずは吉原という紅灯の巷(これがよかったのか悪かったのか、すぐ近くにありまして)、つまり昔の吉原遊郭を、ちょいと息抜きにと先輩たちに連れられてひやかしに行くんですが、白粉つけて紅つけたお姉ちゃんに「坊や可愛いわね、でも学割なしよ」なんて、逆にからかわれ、変にマジになってまごついたりして。うぶですね。もちろん、登楼するお金などかけらも無い貧乏学生。しかしながら、自分を抑制しようとする意志など無駄な努力。情けない妄想ばかりがむくむくと膨れ上がっているところに、「おいっ! 行くぞっ!」っと鬼の一声。鬼と言うのは先輩たちのことであります。「行くぞっ!」って言ったのは、その遊郭に上がらせてくれるのじゃなくて、みんな、これから腕試しをやらされるんです。〈泡沫の夢は儚く消え去りて……〉まったく、いっぺんにしぼんじゃいますよ。情け容赦なく、浅草からふたたび、池袋や新宿の盛り場に連れて行かれるのであります。
 とにかく闇成金の人たちは別として、一般庶民は、もう変に悪酔いするカストリ、焼酎、合成酒の時代です。
 得体の知れない怖いお兄さんたちが、トタン屋根の、うなぎの寝床のような飲み屋や食べもの屋などが立ち並ぶ路地を、肩で風を切り徘徊していて、すれ違っただけで喧嘩を売られるんですから。先輩たちが後ろで見張っていて、「言って来いっ!」って歩かされるんです。昔の柔術で言う辻投げ、剣術で言う辻斬りみたいなものですよ。今の時代はそんなこと出来もしないし、もしやったら事件になってしまいますけど。あの頃はひどい世相だったんですね。
 自動車などの体験乗車と同じです。数をこなせば運転もおのずとうまくなる。それこそ場慣れ喧嘩慣れじゃありませんが、道場空手ではまったく予想も出来なかった、様々な実体験をしょっちゅうやらされるわけですから、そりゃ実戦武術としての自信は確かにつきます。
 今にして思えば、そのこと自体は、つまらないガキっぽいことをしたものだと反省もしていますが、そいう斬るか斬られるかみたいな体験は、この後、社会での生き方を、知らず知らずのうちに変えていったような気もします。
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by masashi-ishibashi | 2008-09-04 14:29
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俳優石橋雅史ぶらぶら日記
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