石橋雅史の万歩計

負けるわけにゃいきまっせんばい! 83

 真っ暗な、光も無い、音も無い、何も外的刺激の無い空間に入れられたら、人間だんだん平衡感覚がおかしくなって、ふらついてくるでしょう。皆さんこれに近い経験をされたことはありませんか? 人間は外部から入ってくるいろんな刺激をキャッチして、バランスを保っているんだそうです。光、音、弱電、等。ですからこれを診断する検査も、同じ事をやります。暗い部屋のベッドに寝かされ、手首などに電極をつけられて、耳にはヘッドホーン、そして光を点滅させたり、いろんな音色を聞かせたり、弱電を通電したりと。するとその刺激による神経の反応が、ちょうど心電図と似たような、グラフになって出てきます。
 まさに元凶はここだったんです。そうです、犯人は風邪のウイルスでした。検査結果のグラフを見せられ、説明を聞いて、私もへぇッと変に納得しましたよ。右側の波形が正常に反応しているのに対して、左側の方ときたらまったく反応が無く、びろびろっとへたり込んで、一本の線のようになって流れているんですから。これじゃ立っていられないのも道理です。悔しいじゃありませんか。本当にこん畜生!ってやつです。風邪を押しての二作品ダブリ仕事というのが、ちょっときつかったんですね。身体は正直なものです。若いときは風邪ぐらいなんだと、熱があろうが、疲れていようが、徹夜続きで仕事をしようが、屁でもなかったものが、五十二歳にもなると情けないですねぇ。抵抗力が少し衰えたとなると、あのろくでなしのウイルス奴、とんでもない頭の中の、想像もしていなかった、肝心な神経なんかに喰らいつくんですから。彼奴は相場として、鼻の奥とか喉あたりに、遠慮してしがみついてりゃいいんですよ。ま、ここで腹を立てても仕方がありませんけど。
 医者いわく、「これは長くかかりますよ、一度やられた神経は、なかなか元に戻らないんです。それにこの類の症状には、治療薬がないので自然治癒を待つしかありません。これはプロバビリティーの問題ですから」何をご大層に小難しい言葉を使っているんだか。つまり<プロバビリティー>と言うのは、ようするに本当とは断言し得ないが、本当と看做すべき根拠が有力である。と言うことなのです。
 と言ったわけで、「目まい止めの薬を差し上げますから、どうぞご自宅で安静にして寝ていてください」これですからね。ひとの弱いところをぐさりぐさりと。少しは遠慮してものを言えってんだ。ちょっとぐらい希望が持てるようなことを言うとか。このとんちき野郎!先が分からないなんて言われて、安静にしていられるわけが無いじゃありませんか。不安と焦りが抱き合って転げ回っていますよ。こっちは一日一日に生活がかかっていて、そんな悠長なことをしていられるような、身分じゃないんですから。何時だって漕ぎ止めたらばったんこんの、自転車操業なのであります。
 しかしこの状態では、今すぐ退院と言うわけにもいかず、ICU(集中強化治療室)をさっさと追い出されて、八人部屋の一般病室へ、いやいや儲けにならない病人は何時も隅っこの方です。
 京都は京都で、撮影の途中、石橋が倒れた、脳出血でもう駄目らしい。針の先は棒になり枝葉がついて大騒ぎ。ちょっと顔を見せないと、すぐに噂で人を殺しちゃうんですから、この業界は。大騒ぎと言ったって、私のことを心配しての騒ぎじゃありませんよ。代役探しや時間と制作費の問題なんです。私で撮影した部分を全部撮りなおしたら、莫大なお金と時間がかかりますからね。いかに代役で最大限ごまかすかです。それにもうひとつ大変なのは、各俳優、スタッフのスケジュール再調整。あの馬鹿野郎! 間抜け奴! もう二度と使わねぇッ。せいぜいこんなところですよ、私に対する思いなんて。冷たいところですから。儲かったのは代役をつとめた某俳優だけ。その割には、その後ずいぶん沢山の仕事をしていますけどね。
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by masashi-ishibashi | 2008-08-27 14:32
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俳優石橋雅史ぶらぶら日記
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