石橋雅史の万歩計

負けるわけにゃいきまっせんばい! 81

  再び舞台へ


 <舞台復帰>

 もともと私が新劇育ちの舞台俳優であることは、前にも述べましたが、映画、テレビと十年余り浮気をしている間に、舞台の方からもすっかりお見限りで。と言っても、大体が以前の私など、まったく無名の風来坊みたいなものですから、舞台育ちなどと偉そうなこと、おこがましくって言えたものじゃありませんけど。それはともかくとして、またそろそろ、舞台もやりたいなあと思っていたその矢先に、昭和六十年(1985)の春、思いもかけず、事務所に舞台の話が舞い込んできたんです。人の縁といいますか結びつきって、何か偶然のようなそうとも言い切れないような、何だか説明のつかないものがあるみたいです。そんな気がしません? たまたまそのお芝居は、私が劇団を辞めて、映画界で仕事をするようになるまでの、大変苦しい時期に、舞台の仕事に誘ってくださって、私を助けていただいた、福田善之さんのお芝居だったんです。
 小国英雄・福田善之脚本、福田善之・津村健二演出、大阪梅田コマ劇場八月・颯爽萬屋錦之介初公演「ご存知一心太助」(役名・土井利勝)。萬屋さんが奇妙な大病に倒れて、再起不能と言われていたにもかかわらず、奇跡的に回復されての復帰第一作の舞台で、私にとっても約十年ぶりの舞台でした。


 <前庭神経炎>

 でも人間、何事もすんなり行かないことの方が多いものですね。しょっちゅうです。
 このお芝居の公演までに、後三ヶ月半しかないという四月十六日の朝、私は突然倒れたんです。いやあ参りましたね。前日まで東映の京都撮影所で、里見浩太朗主演〈長七郎旅日記〉と、松平健主演〈暴れん坊将軍〉の二作品に出演していたのですが、どうしても一日だけ、東京に帰らなければならないことがあり、少しばかり撮影を撮り残したまま、新幹線の最終列車に飛び乗って、夜中の午前一時ごろ我が家に帰宅。疲れていましたので、酒も飲まずにすぐ就寝。その朝方、憎い病魔は襲ってきたのです。皆さん深酒した時に、天井がぐるぐる回り、頭が暗い奈落の底にずーんと、凄い勢いで引き込まれていくようで、物凄く気分が悪くなり、げぇげぇ嘔吐した憶えはありませんか? そんなバカな飲み方はしない? ごもっとも。いやいやあれなんですよ。嘔吐中枢は延髄にあり! なんて知ったかぶりをしている場合じゃありませんが、家中どころか、地球全体が物凄い勢いでぐるぐる回り、目の前は真っ暗になって、頭は奈落の底に引きずりこまれていくわで、脂汗は噴き出し、今にも死ぬかと思われるような恐怖感に襲われ、まさに気が狂う寸前。
 女房はといえば、これまた宿六のあまりにも突然の異常発生に、ただただオロオロするばかり。
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by masashi-ishibashi | 2008-08-25 14:21
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