石橋雅史の万歩計

負けるわけにゃいきまっせんばい! 75

 それにしても、萩本さんという方は本当にすごいですね。ものを捉えるセンスといったらいいのか、そのアイディアといったらいいのか。本来、睨みをきかせて、相手役イコールお客さんを震え上がらせる役どころなのに、睨みをきかせて笑わせようというのですから。本当に最初は緊張しました。私が出ることによって、番組のイメージを壊してしまうのじゃないだろうかって。ところが萩本さんの突っ込みは絶妙なんです。一所懸命に恐い顔を作って凄んでいる私を、これまた一所懸命に笑わせようとする。窓越しの対決。しかし「怖い男」という設定の役で出ている以上、笑うわけにはいかない。なのに必ず私が負けて、こらえきれずに吹き出してしまう。するとスタジオの観客全員が大笑いの渦です(公開録画ですから)。――そりゃあもう堪りませんよ。笑いたいのを必死に我慢して、なおかつ凄みをきかせなければならないのですから。まさに百面相。毎回冷や汗びっしょり(白状しますと、本当は私、笑い上戸で一旦笑い出すと止まらないんです)。ついにギブアップ、思わず窓のカーテンで涙を拭いてしまったりして、また大爆笑。横隔膜が捩れて引きつりっぱなし。お客さんは面白がって大笑いでしょうけど、こっちは苦しくって忍の一字ですからね――。萩本さんの構想はまんまと当たったのです。本当にあの方は天才です。最終回の間近までセリフは一切無し。「表情とコスチュームで見せる悪役の美学」なーんて、格好をつけて強がってみても中身はガタガタ……。
 得体の知れない人物という設定で、視聴者の興味を引っ張り徐々にベールを剥いでいく、そして六ヵ月後、心の優しい萩本さんのことです、種を明かせば、気が弱く根は心の優しい、中学校の理科の先生だったということで落ち着くんです。
 ちょうどこの時期、校内暴力の問題が大変な頃で、実はこの先生も、生徒の前で甘く見られないように、怖い顔の練習をしていたわけで、引っ越してきたばかりの、萩本家の人たちが窓を開けると、いつも、隣家に住んでいる先生のお顔のトレーニングと対面し、珍騒動になっていたんですね。
 その時代時代の社会背景、人心を分析して知ることは、演劇にしても映画にしても、歌謡、音楽、舞踊、等々、その他あらゆる芸術、芸能を創作する時に一番大切なことですね。例えば、ニヒリズムに惹かれる時代、明るいものを求める時代、人生応援歌のようなものを求める時代など――。
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by masashi-ishibashi | 2008-08-14 13:32
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俳優石橋雅史ぶらぶら日記
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