負けるわけにゃいきまっせんばい! 62
えらい反動でがっくりしましたよ。五万円だと言うんです。プロデューサーがそれだけしか出せないって。冗談じゃありませんよ。いくら撮影日数が少ないからと言ったって、あんまりですよ。内心は未練たらたらだったんですが、テレビ映画一本だってそんなギャラじゃやってないよって、大法螺吹いて断ったんです。そんなに安い商品価値だと見られるのは悔しいじゃありませんか。私にだって落ちぶれてはいても何がしかのプライドはあります。このちょっとばかり無理しちゃって開き直った虚勢が、後々よかったのかなあ――。
日尾氏もこれには困ったらしいんです。五年ほど前の共演でどう気に入ってくれたんだか、どうやら本当に撮影所で大見得を切ったらしく、それじゃ俺の面子が立たないから、何とかやってくれよってことなんですね。しかしこっちにすれば、何はともあれこの業界は、次回に出演交渉があったとき、必ず前回出演した時のギャラを前例に持ち出して、スタンダードランクを決めてしまうといった、慣習みたいなものがあるし、それに甘んじて東映本編に初出演したんでは、後々困ることになるから、折角のありがたい話だけど勘弁してよと、こっちが頼むような格好で、何度かそんな応酬が二人の間であり、その結果、じゃあ出演料ではなくて、車代もしくは名刺代わりということで、プロデューサーに会ってくれないかと言う、日尾氏の気持ちを受け入れ、舞台の千秋楽を打ち上げ次第、撮影所へ行くことになったんです。 そのときのプロデューサーは太田浩児さんという、今はもう故人となられた方でしたが、日尾氏が言っていたことは本当で、実はある俳優さんをキャスティングしていたのですが、それをキャンセルし、殺陣師の職人気質というか、日尾さんが、どうしてもあなたでなければと言うので、お任せしたんですが、前の俳優さんの出演料でキャスト費が計上されて、すでにクランクイン(撮影に入ること)していますので、この枠を崩すわけにはいかない。だからあなたがこの出演料でやって下さるか、下さらないかの二つに一つどっちかしかないんです。と大変クールにおっしゃるんですね。日尾氏と違って、さすがはプロデューサー。何とかこの出演料で引き受けてもらえないだろうかとか、じゃあもう少し色をつけましょうとか言うのではなくて、二者択一だとおっしゃる。おまけに「石橋さんは俳優さんですか? 」ときたもんだ。いきなりこれですからね。さすがにむっとしましたよ。この世界、メジャーに顔を知られていないと、こういう対応をされるんだなあと思い知らされました。
by masashi-ishibashi
| 2008-07-30 14:02
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