石橋雅史の万歩計

負けるわけにゃいきまっせんばい! 56

 その後、私が映画(劇場映画)で認められて騒がれ始めたとき、彼は再び自分のプロダクションを立ち上げていた様子で、私の顔を見ては、「今何処にいるの? うちに来ない……」としつこく付きまとっていましたが、恥知らずとでも言えばいいのか、しらっとした顔で、ひとを生きるか死ぬかみたいな状況に追い込んで、大変な裏切りをした男が、これは儲かると思ったら何食わぬ顔を決め込み、平気でひょこひょことダニか小判鮫のように、くっついてくるのですから。相当に毛の生えた心臓を持っているか、鈍感でなきゃ出来ることではありませんよね。私だって人並みの感情を持ってるんです。ですから、これまでずっと売れもせず放り出されて、独りぼっちの、フリーの立場を強いられてきた時に、陰から仕事を回して助けてくれた人を、個人マネージャーとしてお願いしたんです。
 そんなことよりも、この後(つまり偽装解散の後、やっと映画で脚光を浴びるようになるまで)、福田さんは自分の作品に、ほとんど毎回といっていいほど私を呼んでくれました。福田さんの演出助手をやっていたI君から、私の自宅に電話がかかってきて「どう? 仕事してる?」「ううん、何にも無い――」「分かった」こんなやり取りがあって、その後必ず公演の座組みに組み込んであり、そしてパンフレットの連名も、ちゃんと看板に連ねられるように配慮されていました。
 作・演出として売れっ子の福田さんではありましたが、普通の人なら、そこまで他人のことを考えてやるなんて煩わしいことなど、なかなかやってくれるものではありません。今までみんなといっても過言で無いくらい、ほとんどの人が、自分にはメリットの無い私のような人間とは、極力関わらないようにと、避けてきたのですから。それなのに福田さんは、知らないふりをしていればいいような、自分にとって何のメリットも無い私を助けてくださって。きっと本当の優しさと、頑固さと、ちょっとへそ曲がりで、反体制的な面を併せ持っている人なんだなあと今でも思っています。福田さんの作品集を読めば分かることですけど。
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by masashi-ishibashi | 2008-07-20 13:41
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俳優石橋雅史ぶらぶら日記
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