石橋雅史の万歩計

負けるわけにゃいきまっせんばい! 55

 <プロダクションの偽装解散>

 形の上では、事務所が成り立たなくなったので解散するしかない。だから皆さん、それぞれ他所に活路を見つけて、やっていってくれということなのですが。実際には、事前に内々で話が出来上がっていて、儲かる俳優と、天知さんの取り巻きだけを残し、事務所の名称だけを変えて営業を続けていく。つまり事務所の規模として膨らみすぎたものを、少し風通しを良くするため、気分的に重荷になりそうな俳優を、整理する方便でして、私も、その棄てられる方の一人に入れられたということです。ようするにリストラですよ。このプロダクションの偽装解散は、これでもう二度目ですから、そのからくりはよく分かっていますが、情けないかな、小さいながらも営利を先行する事業とは、こんなものかなとも思います。日本のこの業界は、義理人情が渦巻き、また損得勘定の腹芸というか、単純計算の出来ない複雑怪奇な世界でもあるのです。
 舞台の仕事もたまに入ってくるようになり、それと時々出演するマスコミの仕事で、何とかやって行けるんではないかと、かすかな可能性がやっと見え始め、妻の三十六歳という高齢を押しての、初産の矢先にこれですからね。まさに途方投げ首とはこのことでして、善後策がとっさには思い浮かばないのです。参りました。
 四年前、最初のプロダクションが潰れた時、一緒に活路を開いて行こうよと、手を握り合ったマネージャーのA氏に、何とかならんかねと切に頼んでも、「売れないものは仕方ないじゃないの」と、にべもなくそっぽを向かれては、瀬戸物に爪をかけるようなもので、取り付く島も無い有様。この屈辱感といいますか、こっちが崖っぷちに立たされ死活問題で必死な時に、相手に優位に立たれ、なんだか自分がすごく卑屈になったような気がして。こういう時は惨めですね。でもまあ、世の中ってそんなものですかね。その時の彼は、昔のように、自分も潤うために持ち駒を必死になって売り込むという、サバイバル精神は不必要になっていたんです。私たちのような出来高払いだった俳優と違って、プロダクションの事務所に残り、十分な給料を貰っているわけだし、その時売れっ子のご機嫌を取って、スケジュールの調整とギャラの交渉さえしていればよかったのですから。これがあの時の仲間かと思うと、大変寂しい気もしますけど、現実とはこんなものなのであります。
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by masashi-ishibashi | 2008-07-19 15:16
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俳優石橋雅史ぶらぶら日記
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