負けるわけにゃいきまっせんばい! 48
<芸能プロダクション>
前の項でも書きましたが、それこそ右も左も分からない世界に、一人で飛び出したのですから、開けてびっくり玉手箱。みなさんニコニコしながらつれないこと。文化座を先に辞めた、先輩の森幹太さんが所属し、その弟さんの鈴木潔氏が社長だった、文芸プロダクションへも、面倒をみてもらえないかとお願いに行きましたが、さりげなく断られるし、文化座時代にホームグランドのように仕事をしていた(レギュラーもゲストも随分やりました)Nテレビへ行っても、軽く受け流されて、まったく仕事はなく、路頭に迷うとはこのこと。あんなにテレビドラマが多かった時代にですよ。劇団にいたころはそれなりに、ちゃんとした仕事が多い方だったのにと――、どいう仕組みになっているのか、その頃は皆目存じ上げませんでしたけど。うぶだったんですね。今ならいくら鈍な私だって少しは分かります。真面目にちゃんとしたいい芝居をやりさえすれば、仕事は必ずあるものだという考え方は、純粋で一番大切なことであり、失ってはいけないことではありますが、それだけでは、ガキの考え、甘ちゃんなのであります。 各劇団、各芸能プロダクションが、雨後の竹の子のように乱立して、それぞれに水揚げを競い合っている真っ只中、マネージャー同士の縄張り、仁義、背中で吠えてる唐獅子牡丹、なんてほどおっかないものではありませんが、ポスターバリューのある俳優さんならともかく、私ごときは蚊帳の外。世の中すべて弱肉強食。劇団という温室育ち、乳母日傘の私(? ウソッ)など想像もつかない、情実、裏金(バックともいう)、袖の下、下界は熾烈を極めたサバイバルゲームなのであります。 勿論、すべての関係者がというわけではありません。私など当然そいう姑息な才覚は持ち合わせておりませんし、お金もありませんから。 テレビ映画「空手風雲児」の時の手配し――、じゃない、そんなことを言ったら叱られます。その時制作協力で、キャスティングや演技事務をやっていた、Bプロダクションのマネージャー氏が、時々お情けで回してくれる仕事と、女房の細腕で稼ぐわずかな給料まで巻き上げ、亭主関白面をして細々と生きながらえるこのいじましさ。青雲の志、今いずこ。少年よ大志を抱け! いやもう少年じゃない。馬鹿なことを言ってる場合じゃないのです。ローン・ウルフ(Lone wolf 一匹狼)なんて格好のいいものじゃありません。何の得る事もないのに、輪の中をぐるぐると、必死になって駆けてずってはくたびれ果ててる、ハツカネズミといったところでございます。
by masashi-ishibashi
| 2008-07-11 12:48
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