石橋雅史の万歩計

負けるわけにゃいきまっせんばい! 18

 それ以来また付き合いが始まり、お互いあまり疲れないように、大して残ってもいない人生を、またずっと付き合っていこうよなんて言いながら彼の作品にはよく出演させてもらっています。
 その頃の彼は俳優座養成所の五期生に在籍(平 幹二郎なんかと同期ですね)していまして、俳優志望の紅顔の美少年(まだ十八、九歳ですから)でした。 すらっとして本当にハンサムだったんです。 えっ? だったって――、 今はまるで駄目みたいな言い方ですね……、 いいえ、そんなことはありませんよ。そりゃだいぶん太めにはなりましたけど、すごく心が暖かくて優しい人ですから。あれはモテたはずです。
 その後、昭和三十年だったかに、俳優座養成所在籍中、テイチクが行った新人歌手募集のコンテストに見事優勝、歌手に転向してしまったんです。さて芸名ですが、その頃売れていたフランク永井さん( あなたを待てば雨が降る 濡れて来ぬかと気にかかる――  なーんてソフトな低音をきかせた〃有楽町で逢いましょう〃という歌をご存知じゃありません?)に対抗してだかどうだか、事の真相は知りませんが、会社では何か良い芸名はないものかといろんな候補名があがり異論続出。たまたまそこに、かのディック・ミネさんがいらしたので名案はないだろうかと助け舟を乞うたところ、ディック・ミネさん曰く「俺は今から税務署行き。だから忙しいんだ」とのたもうたそうな。それで結局は、ゼームショイキが〈 ジェームス三木 〉となったんだそうですが、なんせ何時も何処までが冗談で何処までが本当なのか分からないようなことを言っては、人を惹きつけ笑わせ楽しませてくれる人ですから―― ?うーん、ま、これは本当のこととしておきましょうか。会社がネーミングしたこの洒落た芸名も、当人はあまり気に入らなかったようですけど。
 さらに彼は、昭和四十二年(1967)、新人映画シナリオコンクールで「アダムの星」という作品が入選。その後、脚本家として次々に大輪の華を咲かせてきたわけですが、それなのに彼の気骨の精神は、頑固にこの名前をペンネームにして、数多くの素晴らしい良い作品を発表し続けてるんですよね。
 ここまで随分駆け足で書いてきましたが、偉人の自叙伝じゃあるまいし、またこれだけが目的でもありませんので、調子に乗ってあまり細かいことまで書いていたんじゃ退屈できりがありませんから、ここらでちょいと一区切りしましょか。


 <雑感>

 まあしかし、振り返ってみますと、大学時代――、 部屋代、食費、学費を稼ぐために、よくぞいろんなことをやりました。
 八百屋の小僧さん、キャバレーのボーイ、パチンコ店の店員、荷担ぎ人足、道路工事の土方、映画のエキストラなどなど。仕事が無くお金も無くて、何日も味噌を薄く溶いた水だけを飲んで、立ち上がると脳貧血を起こすし寒気がするものだから、なるべく動かないでじっと布団にもぐっていたこと、部屋代が払えず住む部屋がなくなって友達の下宿を転々と泊まり歩いたり、駅のベンチで野宿をしたり(あの頃は、夜中、駅の構内にも簡単に入り込めたんです)まさにホームレスです。それらのことが走馬灯のように頭の中で明滅しますが、そんな中で、世の中の不条理も、人の情けも裏切りも、よっく思い知らされました。そして失望しちゃいかん! 失望した時は己の負けだ! と――。
 ともあれ人生は一回きりです。
 青春とは、喜びも悲しみも、未知の世界とかかわりながら、夢と挫折を繰り返す、ガラス細工のように毀れやすい多感な時――。
 若さとは、いくつになっても、常に夢を持ち、旺盛な好奇心を失わないこと――。 でしょうか。
 よく使われる言葉ではありますが「生涯 現役」でありたいものです。
 私は俳優として、いつも自然体で杓子定規の鋳型にはまらない生き方を心がけています。それに柔軟な広い意味での遊び心を持つと言う事でしょうか。人間的な広がりというか、ふくらみはそんなところから出てくるような気がしますけど、どんなものでしょう――。
 もちろん、人間としての基本をわきまえた上でのことです。少なくとも最低限の――。
 ただ闇雲に、滅茶苦茶に、勝手気ままに生きるということではありません。
 まあ、あまり偉そうなことを言えた柄ではありませんけど、出来る限り人間っぽっくそしてデリカシーを持って生きてみたいと思っています。
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by masashi-ishibashi | 2008-05-03 19:03
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俳優石橋雅史ぶらぶら日記
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