ワイン
朝早くから玄関のチャイム。インターホーンに出る。宅急便だと言う。受け取ってみると、ワイン会社の顧問をやっている知人からワインの贈り物だ。早速、彼の携帯電話にダイヤルしてお礼を言っておく。大変元気そうな声だ。もうすぐ60才になるという。「そうか、還暦か」、「先生はお幾つになられましたか?」と聞くので「74才だよ」って言うと吃驚していたが、光陰矢の如し、そう、彼が私の関係していた空手の道場に入門してきたのは確か16才か17才くらいのときだったのかなあ、後に、東京体育館で開催された、空手道の選手権大会で優勝し、その第一報と喜びを、夜、私に電話で報告してきた時の声が忘れられない。今はその会派を脱退して別派を擁している。
彼がその道場に入門した頃、私は8年間在籍した文化座を退団して、文学座で芝居の勉強をやり直していた。それはどうあがいても谷底から這い上がれない蟻地獄のような、俳優として辛い時期の第1段階であった。私はこの頃、妻に支えられながら、池袋にあった8畳一間の木造ぼろアパートに二人で住んでいたのだが、その道場が近いと言うこともあって、時々教えに行っていた。その時の教え子だ。足技と根性に素質があると見て、手取り足取り特別に教えていた。私自身は現実の辛苦からの逃避とでも言うか、それを振り払うかのように、ひたすら汗を流していた時代だ。30代前半。ワインの中にふっとそんな景色が浮かんでくる――。
by masashi-ishibashi
| 2007-06-21 17:12
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